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ヴァンフォーレ甲府サポーターがサッカー知識2割、愛8割で語るブログ。

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小瀬劇場を作る!試合設営ボランティアのリアル

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 ひょんなことから試合設営ボランティアに参加して5ヶ月が経った。

 今では作業や立ち回りにもだいぶ慣れ、今では試合日に設営ボランティアに参加することが当たり前になった。

 

 「え、ボランティア?甲府だって試合の設営はバイトがやるんでしょ?」と思っている他サポの皆様。

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 そして意外と知られていない設営作業の内容。

 そこで今回は、ヴァンフォーレ甲府の試合設営作業のリアルをお伝えしていく。

 

作業開始前

 デーゲームは午前7時、ナイトゲームは午前8時に集合。

 スタジアム正面入口で消毒・検温をし入場。

 控室に荷物を置いたら、ピッチ手前の陸上トラック辺りで作業開始時刻まで待機する。

 この時点ではスタジアムに甲府色はまったくない。ただの陸上競技場という感じ。

 

 作業開始までの間、ボランティアさん同士で世間話をしていることが多いが、海野一幸会長、佐久間悟社長、輿水順雄エグゼクティブアドバイザーがボランティアさんの話に入ってくることもある。

 ……そう、設営作業は会長や社長含め、甲府のスタッフ全員参加。

 皆さんジャージ姿でボランティアさんと同じように作業をこなすのだ。

 

 作業開始時刻になるといったん集まって、簡単な挨拶とスタッフさんがその日の作業に参加した各所団体の紹介をし、すぐに作業開始となる。

 

設営作業の準備

 まず陸上トラックの内側に設置されているバーを抜いて隅に移動させる。

 ピッチのすぐ横にあるため、選手が当たったり転倒したりしたら危ないからだ。

 これが結構重くて私は1本持つのが精一杯なんだけど、広報担当の小野さんは2本くらい余裕で持っている。さすが元GK……。

 

 バーを移動し終えると、バックスタンドとビジター席の間の出入り口に行き、バックスタンド裏の倉庫から用具類を搬出する。

 監督スタッフが座るベンチ、選手入場ロードを覆う屋根、各種ブースのテント、青いフェンス、スポンサーバナー(横断幕)などなど。

 

 搬出し終えたら、テント組み立て担当はスタジアムの外へ。

 私を含むスポンサーバナー掲出担当はバナーを地面に並べ、掲出する場所別にスポンサー名とバナーの背景色と文字色をスタッフさんが読み上げるので、バナーを順番に台車に乗せていく。

 バナーは小さく折りたたまれた状態のため、背景色と文字色を読み上げても普通すぐにはわからない。しかしボランティア歴が長い皆さんにはだいたいわかるらしい。すごい。

 これは新入りの私にはできないことなので、そのあいだ私はバナーが収納されていた台車から、両端にフックが付けられた丈夫なゴムを取り出し、10本ずつ束ねる作業をしている。このゴムも、後で設営作業に役立つこととなる。

 ゴムを束ねる作業が終わる頃には、バックスタンドホーム寄りに掲出するバナーが台車に乗せ終わる。バックスタンドホーム寄り担当(厳密に決まっているわけではないが、毎回同じメンバー)の皆さんと一緒に台車を押してバナーを運んでいく。

 

スポンサーバナー掲出作業

 バックスタンド最前列の手すりには、スタジアム中央の目印となるテープが貼ってある。

 そこから順番に手すりにバナーをくくりつけていく。どこにどのバナーを掲出するかは全て決まっている。

 1個のバナーにベルトが5個取り付けられているので、端のベルトを持った人が手すりにくくりつけてから他の人が順番にくくりつける。端の人を待たずに勝手な場所に取り付けるとバナーが弛み、ベルトをほどいて位置を再調整しなければならず、二度手間になる。

 

 時々会話をすることもあるが、作業中は自然と無言になる。

 観客席に向かってバナー掲出作業をしているため、スタジアムの様子はまったくわからない。

 しかし担当していた分のバナーを張り終わってピッチの方へ振り向くと、他の場所でもバナーが張り出されており、小瀬劇場が仕上がっていく様子がはっきりとわかる。

 

 バナー掲出作業が終わると、今度はバナーの固定作業。

 そこで登場するのが、先ほど10本ずつ束ねていた、両側にフックがついた丈夫なゴム。

 重石となるコンクリートブロックの両側の穴にゴムを通し、バナーの下の角にハトメの穴が空いているので、そこにフックを引っ掛けてバナーを固定する。よくわからない人は、次のホームゲームでバックスタンド側のバナーの下部分を見てほしい。

 この固定作業でバナーが風でめくれ上がらなくなる。地味だけどスポンサー様のバナーが見えなくなるのを防ぐ大切な作業だ。

 

 その後、砂場スポンサーの幕も広げて重石で固定し、バックスタンドホーム寄りのバナー掲出作業は終了。

 ピッチを避けるようにぐるりと回って、休憩のため一旦メインスタンド下の控室に戻っていく。

 控室に戻る途中でピッチを見渡すと「選手はここでスタジアム中の視線を一身に浴びてプレーしているのか」とか「この広いピッチを90分間上下動するのは並大抵の体力じゃできないな」などと選手に思いを馳せることができる。

 ピッチレベルで選手の思いや凄さや感じ取れる。これが設営ボランティアの醍醐味だ。

 

 控室でクラブが用意してくれたペットボトル飲料をいただき、ひと息ついた後すぐにメインスタンドに向かう。

 最前列の手すりに同じようにバナーをくくりつけたり、観客席とコンコースの出入り口の階段上部にバナーを固定したりする。

 この時間帯になるとブーステントの組み立てなど他の場所で作業を終えた人達も集まるため、各自手の足りないところに行き、自主的に手伝うこととなる。

 

 ここで通常の作業は一通り終わる。

 ピッチ看板はサッカー協会で設置してくれるらしく、通常作業で私達が設置することはない。

 しかしサッカー協会の都合により、私達が設置する場合もあるのだ。

 

ピッチ看板設置作業

 再びバックスタンド裏の倉庫に行き、ピッチ看板が積まれた台車を大人数で運ぶ。

 そして各場所にピッチ看板を設置していく。

 ……と簡単に書いたが、このピッチ看板、めちゃくちゃ重い。

 私も最初の頃に一回運んでみたが、あまりの重さに途中で落としそうになり、一緒に看板を持っていた海野会長から「大丈夫け?無理しちょしよ」と心配された。そして案の定、無理して腕を痛めた。

 私の腕はともかく、ピッチ看板を落として破損したら大変なことになるので、恥ずかしながらピッチ看板設置作業には参加しないことにしている。

 

 先日の大宮戦では、スタッフさんの計らいで、皆さんがピッチ看板を設置している間に、看板設置に必要な道具をカートに乗って置いていく作業に参加した。

 カートの荷台に乗ったのは初めてで、スタッフさんがどんなに慎重に運転しても振り落とされそうで結構怖い。ヴァンくんとフォーレちゃんって、車種は違えどこれを毎試合、何回もやっているんか……。

 

 ピッチ看板設置作業が終わり、ついにすべての作業終了。

 小瀬劇場の舞台が整った。

 

作業終了後

 作業に参加した全員がもう一度集まり、重鎮ボランティアさんの一本締めで解散。

 

 ボランティアの皆さんもスタッフの皆さんも、本当に気さくで良い人ばかり。

 お互いに「お疲れ様でした」と言い、お弁当を受け取って駐車場に着くまで話に花が咲く。

 「じゃあまた後で!」と別れ、いったん帰路につくことになる。

 

設営ボランティアに参加した感想とまとめ

 今まで特に何も感じることなく行っていたホームゲーム。

 しかし設営ボランティアに参加してみて、気付いたことがある。

 それは多くの人の手によって試合が成り立っているということ。

 設営ボランティアは裏方の仕事で、ボランティアさんの名前が表に出ることはない。

 それだけに試合日に小瀬に行けば試合が開催されることは当たり前だと思いがちだ。私もそうだった。

 だけど、そこに至るまでには沢山の人の労力がかかっている。

 みんなヴァンフォーレのために、誰一人サボらず一生懸命作業をこなす。手が足りないところがあれば手伝いに行く。困っている人がいれば助けに行く。誰に言われたわけでもなく、自主的に、積極的に。

 そんな人たちの手によって、選手たちが躍動する小瀬劇場は作られているのだ。

 

 ブースを日差しや雨から守るテント、スポンサーバナーがめくれないように固定するコンクリートブロック、観客席への階段の手すりにピンと張っているバナー固定用のフック付きの黒いゴム。

 ホームゲームでこれらに少しでも気を留めてもらえたら、設営ボランティアとしてこれほど嬉しいことはない。