ホーム群馬戦の試合日前日。
琉球が松本に4-0で快勝し、山形も金沢に4-1で快勝と、上位陣のゴールラッシュが繰り広げられた。
甲府はリーグ戦4試合勝利無し。しかも前節のホーム山口戦や、4試合前のホーム新潟戦では、複数得点を取っても複数失点で引き分け、という何とも歯がゆい試合結果だった。
「快勝」という言葉が遠く思えて、思わずため息をついてしまった土曜日。
翌日の試合がまさかの展開になるとは、この時は思いもしなかった……。
それではホーム群馬戦をサッカー知識2割(甲府愛8割)で振り返っていこう。
前半
選手の距離感がとても良く、前からのプレッシャーもハマっているなあと思った7分。いきなり試合が動く。
甲府の泉澤仁選手が相手2枚を引きつけておいて、荒木翔選手が走ったスペースにパスを出す。パスを受けた荒木くんが左足を振り抜き、先制ゴールを決める。
荒木くんは今シーズン初ゴール。昨シーズンプロ初ゴールを決めた時にはあまり喜ぶ素振りを見せず「久しぶりすぎて喜び方を忘れていた」なんて話していたけど、この試合では満面の笑みを浮かべていた。
新井涼平選手にひょいっと持ち上げられていたのもかわいい。
その5分後、12分。
群馬の大前元紀選手が持ったボールを、甲府の野澤英之選手がプレスをかけて強引に奪う。
奪ったボールを野津田岳人選手が仁くんにパス。仁くんが前線のウィリアン・リラ選手にパスを送ると、リラが強烈なシュート。相手DFとゴールポストに当たった跳ね返りを、野津田くんが利き足とは逆の右足でゴールを決める。
野津田くんは待望の移籍後初ゴール。そして3シーズンぶりのゴール。
ここ2シーズンはゴールがなく、試合出場もままならず、今シーズン相当な覚悟を持って甲府に来た野津田くん。
そしてこれまで自身のゴールを渇望しつつも、チームメイトのゴールを全力で喜んでいた野津田くんに、サッカーの神様がようやく、ようやく微笑んでくれた……!
ゴール後は、今まで野津田くんが祝福していたチームメイトが、野津田くんのもとに集まり祝福するという、何とも感動的な絵面になった。
得点を決めた野津田くんの顔と名前が小瀬の大型ビジョンに大映しになると、小瀬が「わあー!」と沸き立った。それほど甲府サポがみんな待ち望んでいたゴールだったのだ。
そのまた5分後、17分。
野津田くんがスライディングでボールをカット。仁くんがボールを持つとタイミングを見計らって、いとも簡単にゴールを流し込む。これで3-0。
簡単に決めたように見えるけど、相手DFが来ないことを見計らって狙いすまして決めた高度なシュート。
仁くんはチーム内得点王独走状態(この時点では7得点)。昨シーズン3点しか決められなかったのが嘘みたいやで……。
32分。
この日久々のスタメン、甲府のGK河田晃兵選手のゴールキックをリラと相手DFが競り合う。こぼれてタッチラインを割りそうなボールを甲府の鳥海芳樹選手と群馬の久保田和音選手が追いかけ、タッチライン際で粘った鳥海くんがボールを奪う。
鳥海くんはゴール前で相手のスライディングをかわし、相手GKの股を抜いてゴール。これで4-0。
大卒ルーキー鳥海くんは今シーズン2点目。身長165cmだけどフィジカルが強くて、相手DFと体をぶつけ合ったら相手が吹っ飛ぶほど。
それにこの落ち着きっぷり。相手がスライディングしてきてもヌルッとかわし、全部一人でやってのけた。
今年の大卒ルーキーは本当に有望すぎる……!
突然のラノベ風ロゴ
得点以外のところでは、怪我明けのボランチ野澤英之選手が相手にガンガンプレスをかけたり、出場停止明けのリベロ新井涼平選手の出足が早かったりして、群馬のボールをことごとく回収していた印象。
のざくんは5月1日のホーム金沢戦以来の出場で、本人も相当気合いが入っていたと思う。二度追い、三度追いもいとわない献身性は、甲府の貴重な戦力だ。
新井くんも群馬のパスを読んで、相手FWより一歩前に出てボールを回収していた。大声を出してディフェンスラインを統率していたし、甲府のキャプテンたるゆえんを見せつけた。
右ウイングバックの関口正大選手はゴールこそなかったものの、完全に吹っ切れた感じがした。
今まで少し感じられていた迷いがなく、ボールを持つとガンガン前線に持ち運んでゴール前にも顔を出す。
右シャドーの鳥海くんとのコンビネーションもすごく良い。
今季序盤は快進撃を繰り広げ、その後相手に徹底的に研究・対策されて、そしてそれをも乗り越えた関口くん。これからますます期待しちゃう……!
そしてひたむきに頑張っているからこそ、道は拓けたのだ。
まさかの大量4得点。昨シーズンは3得点が最高だったので、4得点以上は2シーズンぶり。
そしてこれがまだ前半!書くことが多すぎて、この時点ですでに2000字くらい書いているけど、ブログ記事もまだまだ続くよ!
後半
ハーフタイムで修正してきた群馬に押し込まれる展開が続く。
しかし63分。群馬の大前選手からノーファウルで奪ったボールを、新井くんが仁くんにパス。そこから仁くんは一人でゴールへと独走。群馬のDF渡辺広大選手と畑尾大翔選手を翻弄し、ゴールへと突き刺す。これで5-0。
Twitterのフォロワーさんとも話していたけど、仁くんはもう「ゾーンに入っている」感じ。これはもう誰にも止められません!
これで仁くんは今季8点目で、J2得点ランキング4位に躍り出た。
あともう少しで10桁得点だ!!!!!
71分。群馬のコーナーキックから白石智之選手に1点返される。5-1。
大前くんは相変わらず良いボールを蹴るなあ。……とか悠長なことは言っていられなくて、セットプレー、特にコーナーキックの守備は立て直しが急がれる。
といっても具体的にどこをどうしろというのは言えない(正確にはわからない)ので、とにかくスタッフ陣には頑張ってほしい。
ただこの日はこれで終わる甲府ではなかった。
87分。前線へ出たパスに反応したリラがボールを運び、相手のスライディングをかわしてゴール前へマイナスのクロスを送る。途中出場でなぜかそこにいた金井貢史選手が体勢を崩しながらラストパス、長谷川元希選手が押し込みダメ押しの6点目。6-1。
元希くんは4月21日のホーム相模原戦以来のゴール。
ずっとスタメン出場を続けていたけど、この試合ではベンチスタートで悔しい思いもあったはず。その中で確実に結果を残したことは、今後につながる大きな収穫だ。このゴールで関口くんに続いて吹っ切れそう。
金井さんはさすがのNSK(なぜそこに金井)っぷり。自分で決められたかもしれないけど、確実性と後輩の活躍を優先したのは、良い先輩の証拠だ。
ゴール後、倒れていた金井さんに野津田くんが抱きつき、しばらくいちゃついていたことはここだけの秘密。
90分。甲府の左サイドを突破した群馬の田中稔也選手がクロスを上げ、走ってきた大前元紀選手がヘディングで押し込む。6-2。
大前選手には昨シーズンの群馬戦でも決勝ゴールを決められているから、次の対戦時も要警戒だ。
その後も群馬に押し込まれるも、それ以上スコアは動かず6-2で試合終了。
2018年5月のホーム大分戦以来の6得点。温泉地に風呂(2-6)スコアで勝利するという、新たなジンクスを作ったぞ!
今までの得点力不足、決定力不足が嘘のような、まさに「快勝」だった。
試合後
ヒーローインタビューは3シーズンぶりのゴールを決めた野津田くん。
インタビュー後、広報のカメラに向かって安心したような表情を見せていた。
6/27 #甲府_群馬#野津田岳人 選手
— ヴァンフォーレ甲府 (@vfk_official) 2021年6月27日
『やっと決めれた良かった泣きそう』
その言葉が全て。
私たちも彼のゴールを待ち望んでいましたが、何より本人が一番待ち望んでいた結果。
がっくん、3年ぶりのゴール本当におめでとう✨#vfk #未来へ #Unite pic.twitter.com/C8DEZEYOsl
6/27 #甲府_群馬
— ヴァンフォーレ甲府 (@vfk_official) 2021年6月27日
みんなあなたのゴールを待っていた🙌🥺✨💙❤️#野津田岳人 @GakutSanfre 選手!!!
これからも、じゃんじゃんゴール期待しています👏
移籍後初ゴール、おめでとう🎉#vfk #未来へ #Unite pic.twitter.com/ql2RGamdZ8
印象に残ったのは「マジで苦しかった」「もう決めれないと思ってた」「呪縛から解放された」という言葉。
サンフレッチェ広島で、日本代表の浅野拓磨選手と共に将来を嘱望されていた野津田くん。浅野選手は広島で活躍し海外に羽ばたき、日本代表でも活躍している中で、野津田くんはレンタル移籍を繰り返し、思うような結果が出せず伸び悩んでいた。
代表戦で浅野選手がテレビに映るたびに、私は「野津田くんは今、何を思っているんだろう」と思って、胸が苦しくなることもあった。何より野津田くん本人は相当苦しい日々を過ごしていただろう。
今シーズン甲府に来て、開幕戦で試合終了間際の決勝PKを止められてしまったこともあった。ホームヴェルディ戦ではミドルシュートを放ったものの、バーを叩いてほんの数センチの差でゴールとはならなかった。
もうこれは実力どうこうより運レベルの話で「もう決めれないと思ってた」という言葉には、どんなにシュートを放っても決められないという壮絶な苦悩が如実に表れている。
それでも今日はゴールを決めた。しかも相手GKの脇の下をすり抜けるような際どいコースを、利き足とは逆の右足で決めてみせた。野津田岳人の真価を見た気がした。
もう「◯年ゴールがない」と言われることもない。試合出場を重ね、アシストも挙げ、何よりこの試合でゴールを決めた。野津田くんを縛るものなど何もないのだ。
長年の苦悩から解き放たれた野津田くんが、これからさらに躍動する姿。これを見ることが楽しみで仕方ない。
試合終了後しばらくして、2017年まで3年半甲府にいた畑尾大翔選手が、甲府のゴール裏に挨拶に来た。
甲府を離れてもう4年になるけど、対戦のたびに挨拶に来てくれるのは本当にありがたい。そして甲府サポも帰らず待っていたのは、畑尾くんが愛されている何よりの証拠。
畑尾くんにはこれからも頑張ってほしいし、ずっと応援していきたい。
まとめ
まさかのゴールラッシュで、待ち望んでいた快勝と、一ヶ月ぶりの最高の週末がやってきた。
この勢いで、シーズン前半の最終戦、アウェイ岡山戦に臨みたい。
みんなゴールを決めたことで良いイメージを持てただろうから、苦手岡山に対してもやってくれるはずだ。
失点もあったけど、良い雰囲気の中で改善できるのは良いこと。失点をいかに修正できるかにも期待しよう。
甲府の快進撃が、ここから始まる。
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