※画像は私お手製のミサンガ
以前務めていた会社で、男性の同僚(某J1クラブのサポ)からこう言われた。
「胸に『はくばく』ってめっちゃダサいですよね」
その同僚は超自信家でプライドが高すぎて何を言ったところで無駄なので、私は笑顔でこう返した。
「そうだね。『NISSAN』の方がカッコいいね」
人の感じ方は人それぞれ。
まあでも、一般的に見れば「はくばく」より「NISSAN」の方がカッコいいロゴであることは間違いない。
それでも私は胸に「はくばく」のロゴがあることをダサいとは思わない。
むしろ誇らしいくらいで「見て見て!」と胸を張りたいくらいだ。
この意識の違い。
「はくばく」ロゴはダサいのか、誇らしいのか。
別にそんなことは人それぞれの価値観で良いんだけど、この違いを真面目に考察してみようと思う。
自分が応援しているクラブの胸スポンサーを「ちょっとダサいかも……」と思っているサポーターがいれば「はくばく」を自チームの胸スポンサー名に置き換えて読んでほしい。
「はくばく」ダサい派の意見
かくいう私も甲府サポになる前は「『はくばく』とかダサっ」なんて言っていたので、当時の私の意見を書いてみる。
まず挙げられるのが、ひらがなだということ。
日本語でも「NISSAN」とか「HITACHI」とか、英語表記の方がカッコ良く見える。
あとは大企業ではなく、山梨の地元企業だということ。
これは田舎者のコンプレックスとでも言うべきか。とにかく「地元の小さな企業のロゴなんて(笑)」みたいな認識だった。その程度の認識だったのだ。
「はくばく」誇らしい派の意見
こんな認識の私だったけど、甲府サポになって認識がガラリと変わった。
何より、はくばくと甲府の関係性について知ったことが大きい。
はくばくは甲府が経営危機に陥っていた2001年から今に至るまで、スポンサーとして甲府を支え続けている。
Wikipediaに書かれていたエピソードは、甲府サポにとっては感涙モノ。
2000年に山梨県唯一のプロチームであるJリーグ・ヴァンフォーレ甲府(以下、甲府)が経営危機に陥り、就任したばかりの海野一幸社長はスポンサーを獲得するため県内の企業を回っていた。その結果中小企業などによるサポート体制は確立していったものの肝心の胸に入れるユニフォームスポンサーが決まらずにいた。そこで2001年のシーズン開幕が間近になったある日、海野社長ははくばくを訪れて長澤社長に胸部分のスポンサーを要請する。これに対しラグビー経験者であり、スポーツに関して理解のある長澤社長は経営危機であり、年間数千万と言われる広告料に対しての費用対効果が未知数であったのにもかかわらずスポンサーになることを承諾した。甲府としては2年ぶりの、Jリーグ参入後初めての胸スポンサーとしてユニフォームの胸部分に「はくばく」の文字が挿入された。
この年甲府は3年連続最下位になるものの目標を達成し2002年以降の存続が決定、はくばくの胸スポンサーも順調に継続されると思われていた。
しかしその直後、はくばくの本社工場で火災が発生する。焼失した部分は生産ラインには影響がなかったため生産は継続できたものの、2002年以降のスポンサー継続が危ぶまれる事態に陥ってしまう。はくばくの撤退により甲府は再び経営が危ぶまれると思われたが、この話を聞いた甲府サポーターが立ち上がり、はくばく商品を積極的に購入する運動を展開する。この甲府サポーターの行動に心を動かされた長澤社長は2002年以降の胸スポンサー継続を表明した。
その後もはくばくはスポンサーを継続し、2007年と2008年は背中に移動したが、2009年より再び胸スポンサーになっている。
はくばくの長澤社長は、かなり熱心で素晴らしい方だ。
去年FM甲府のラジオ番組に出演した際には「甲府はJ1にいなくてはいけないクラブ。『たくさん勝てるからJ2でいいや』ではなく、上を目指し続けてほしい」という趣旨の話をしていた。
はくばくと甲府の関係性を知ってからというもの、私は以前まで思っていたひらがなのダサさとか田舎者のコンプレックスなどすっかり忘れた。
「この先どんな大企業がスポンサーについたとしても、甲府の胸スポンサーはずっと『はくばく』が良いな」と思うようになったほどだ。
ちなみに2015年の夏季限定ユニフォームは「Hakubaku」表記だった。
しかし結局「Hakubaku」表記はこのユニだけで、その後は通常ユニフォームも夏季限定ユニフォームも「はくばく」表記。
当時「やっぱり『はくばく』じゃないとしっくりこない」なんてツイートも見られた。私も同意。
そのくらい甲府サポの「はくばく」への思い入れは強いのだ。
意識の違いの原因
やはり「はくばくという企業自体や、はくばくと甲府の関係性を知っているか知らないか」というところだと思う。
この意識の違いで「はくばく」ロゴが誇らしいかダサいか、見方が割れる。
山梨県民の中でも、はくばくと甲府の関係性はあまり知られていないので、周囲からは結構普通に「『はくばく』とかダサい」と言われる。
J1にいた頃は「相手が『TOYOTA』なら『はくばく』じゃ勝てっこないよな」と言われたこともある。勝ったけど。
サッカーや甲府に興味のない人の認識はそんな感じなのだ。
咎めても仕方ないので、笑顔で流すくらいの余裕は持っておきたいと思う。
もちろん説明できるチャンスがあれば熱く解説したい。
「ダサい」という声に怒りたくなったら
以前、元甲府関係者が「はくばく恥ずかしい」という文言のツイートをして大炎上してしまったことがあった。
本人に怒りのリプライを送ったサポーターもいて、私も怒りのツイートこそしなかったが、正直良い気はしなかった。
しかし他サポのあるツイートを見て、グサッと来た。
「甲府サポだってはくばくは恥ずかしいと思っているからこそ怒るんだろ。俺達の〇〇(自チームの胸スポンサー)が貶されても、俺は〇〇がカッコいいと思っているから、そこまで怒らない」という趣旨だった。
いわゆる図星というやつだ。当時はグサッと来て、同時にその他サポに対してものすごく頭にきたが、それも図星だからだった。
やっぱり当時は少しだけ「はくばくってちょっとダサいよね……」と思っていた節があった。その時はまだそこまではくばくの良さを完全にはわかっていなかったからだ。
だから元甲府関係者のツイートにも、他サポのツイートにもかなり頭にきた。何度も言うが「図星」だったからだ。
今は完全に「はくばくは誇らしいしカッコいい」と思っているから、周りがどんなにはくばくを馬鹿にしようと「あ、この人ははくばくの凄さを知らないんだな」と受け流せるようになった。
もちろん私がその当時よりは多少大人になれたから、ということもあるだろうが、自分でもびっくりするくらい怒りの感情が湧いてこなくなった。
「ダサい」の声に怒りたくなったら、もう一度はくばくの素晴らしさや、スポンサーとして支えてくれていることへの感謝の気持ちを思い出そう。
最後に
「はくばく」に限らず、スポンサーロゴがベタベタ付いているサッカーのユニフォームは、傍から見ればどれもダサいらしい(大学時代の友人談)。
それをサポーターが正々堂々着ているということは、やはりロゴのファッション性云々ではなく、サポーター一人ひとりがスポンサーの誇りを知っているからだ。
私はこれからも「はくばく」ロゴが入ったユニフォームを胸を張って着ようと思う。
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